「神の民の救い」 エステル7:1-10
私にいのちを与え、私の望みを聞き入れて、私の民族にもいのちを与えてください。(3節)
いつの時代にも、神を信頼する人を憎む者がいます。正しく歩む人を快く思わない者がいます。しかし神は、長い目で見るならば、悪しき者たちの計画を打ち砕き、神に従う者たちを救ってくださいます。大切なのは、その神のみわざを進めるために、神は敢えて人を用いられることです。エステルは、主に用いられた人でした。
一、悪しき人の計画
ハマンは、どんな権力者にもへつらおうとしないモルデカイが憎くてたまりませんでした。その憎しみがユダヤ人全体にまで広がって、虐殺計画を企だてたのです。エステルはこのことを知ってハマンを宴会に招き、王と自分に直接会う機会を設けました。ハマンは美しい王妃に招かれたことを喜びます。でも、まさかそこで「どんでん返し」が起きるとは夢にも思いませんでした。
エステルは、自分が属するユダヤ民族がペルシア帝国内においても有益な働きをしていることを王に知らせ、もしユダヤ民族が虐殺されるなら、大きな損失を受けることになると伝えます。唯一の神に誠実に従う者は、どこに住もうとも、その地域で他の人々に益をもたらします。神と人に忠実に仕えるからに他なりません。
二、失敗した計画
エステルが「自分の民族を虐殺しようとしている者がいる」ことを王に話すと、王はびっくりします。しかもその悪企みをしているのが側近のハマンであると指摘されたとき、気が動転したのでしょう。冷静になろうと宮殿の外に出ていきました。大きな権力をもっていたハマンでしたが、自分よりもっと大きな権力を持つ王の前では、いのち乞いをするしか方法はありませんでした。しかしそのことも王をさらに怒らせたのです。
悪者の計画は、はじめ順調のように見えても、そのうちに化けの皮がはがれます。どんなに綿密に計画されていても、思いがけない落とし穴があるのです。特に自分より偉大な方の前では何の力もありません。現代にも、自分の能力や才能を誇る人々がいます。でも、神の力に対抗することは不可能です。自分の考えや行動によって計画を実行しようとする者は、必ず失敗することをハマンの生き方は示しています。
三、救いの計画
この宴会の直前、ハマンはモルデカイを処刑するために高さが20メートルもある高い木を用意していました(5:14)。しかしちょうど同じころ、王はモルデカイが王暗殺計画を防いだという情報を聞いていたのです(6:2)。モルデカイを高く評価した王が、ハマンの悪企みを知ったときにどう対応するかは明らかでしょう。自分の用意した木で、ハマンは処刑されることになりました。
それだけでなく、ハマンが主導したユダヤ人虐殺計画は、新たな法令が出されることにより骨抜きになりました。まさに「どんでん返し」がここに起こったのです。エステルが決死の覚悟で王に会い、ハマンの悪企みを知らせたことが、ユダヤ人の救いにつながりました。神の救いの計画は一人の人の献身的な行動によって実現します。
ユダヤ人の救いは、新約聖書で明らかになる全人類の救いを象徴的に示しています。主イエスを信じた者は、どんな民族であっても、「神の民」と呼ばれます。その民を罪から救うために、主は十字架にかかり、神の憤りを身に負われました。この偉大な神の計画があることを、私たちはもっと明確に知り、語る使命があるのです。