2023.01.22 メッセージ内容

「神のなさる不思議」 エステル2:3-9

あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、このような時のためかもしれない。(4:14)

ダニエルの晩年から約50年後、ペルシア帝国は最盛期を迎えていました。この時ユダヤ人の大半は捕囚から解放され、帰国していたのですが、高い地位にあった人々はペルシア帝国に留まっていたのです。その時代に思いがけない災難がユダヤ人にふりかかろうとしていました。その中で用いられたのがエステルという女性でした。

一、王妃の失脚 (1章)

当時、クセルクセス王は周辺諸国を平定し、豪華絢爛たる生活をしていました。半年間にもわたって宴会を続け、自分の権力の大きさを誇示していたのです。王妃ワシュティの美貌も王の誇りだったので、彼女を皆に見せるために宴席に連れてくるように命じました。しかし王妃はその命令に従いませんでした。王は、自分の命令に背く王妃に対して激しく怒ったのです。

このような歴史は長く続いてきました。男性中心の見方は、洋の東西を問わず、あちこちで大きな悲劇を招いてきたことは否定できません。王の側近も王の気持ちを忖度し、王妃を失脚させようとしました。しかしこの決断が、思いがけない物語を生み出すことになったのです。それは、神の深い摂理を示す物語でした。

二、新しい王妃の選出 (2章)

王の憤りがおさまった後、侍従たちは後任の王妃を選び出す手筈を整えました。ペルシア帝国に住む、容姿の美しい未婚女性を王宮に召し寄せたのです。当時の帝国には周辺諸国から様々な民族が集まっていたので、ミス・ユニバースを選ぶコンテストを開くようなものです。その中に、ユダヤ人の娘エステルがいました。彼女の美しさは周囲にも評判だったようです。

エステルの両親はすでに亡くなっており、彼女は年の離れたいとこであるモルデカイの手で育てられていました。モルデカイは王宮警察の高官だったようです。エステルは最初から特別視されて、特別なエステがほどこされました。しかし、自分がユダヤ人であることは明かしていません。捕囚民だったことが彼女に不利にならないようにというモルデカイの配慮と思われます。かくして、エステルは王妃となるに至りました。

三、敵の出現 (3章)

ところが場面は急展開します。ハマンという人物が王に目をかけられて、側近の中で最も高い地位についたのです。彼は、モルデカイが自分に膝をかがめないことに腹を立て、ユダヤ人虐殺計画を立てました。ユダヤ人の持つ富を奪い取ろうとする魂胆もあったのでしょう。でもモルデカイはダニエルと同じように、真の神以外に礼拝すべき者はないと確信していたのです。

ユダヤ人のこの固い信仰は、それ以降も失われることがなく、迫害の歴史が積み重ねられてきました。しかし、神はそのような歴史の中でも働いておられました。エステル物語はその一つです。ナチスの悲惨な事件があったことも、1948年にイスラエル共和国が樹立するきっかけになりました。エステルは、神の物語の中で一つの大きな役割を果たすことになるのです。

エステルが王妃になったことは、ユダヤ人を滅ぼそうとする敵に対する神の不思議な手段でした。モルデカイがエステルに出した手紙は、このことを彼女に思い起こさせるためでした。エステル記の中には、「神」という語は一度も使われていませんが、神はご自分の民を守るために働いておられます。それに応答できるでしょうか。

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