「分裂した王国」 第一列王11:1-13
わたしは王国をあなたから引き裂いて、あなたの家来に与える。(11節)
紀元前971年に即位し、荘厳な神殿を建築したソロモン。しかしその晩年は悲しいものでした。「彼の心は父ダビデの心と違って、彼の神、主と一つになってはいなかった」と聖書は冷徹に述べます。その結果、彼の死後、王国は分裂しますが、そこに至る経過は次のようなものでした。
一、ソロモンの罪
神から知恵を与えられたソロモン(平和という意味)は、戦わずして自国を繁栄に導くことができました。周辺諸国との平和協定を結んだことが、一番大きな理由です。そのために、彼は外国の女性を妻、ないしは側女としました。いわゆる政略結婚です。しかし、彼女たちは自国から偶像の神々をもってきました。平和を維持するためにはそれを容認せねばなりません。それが、ソロモンの心を神から離してしまいました。
戦争を避けるために外交交渉をすることは、現在でも大切なことです。しかし、真理に反して妥協することは、悲惨な結果をもたらすことを忘れてはなりません。日本は多神教の国なので、唯一の神を信じる者に対して不寛容になりがちです。私たちは、他の神々を礼拝する人を否定してはなりませんが、自分がその神々に心を向けることは決してしてはならないのです。
二、神のあわれみ
ソロモンが神から離れないように、神は即位の時と神殿建築の時に、二度も彼に現れなさいました。またソロモンが外国の神に妥協した時にも、すぐに彼を裁いたり、国を滅ぼしたりすることはなさいませんでした。どちらも、神のあわれみのゆえです。そして、イスラエル12部族のうちのユダ族とベニヤミン族を、ソロモンの子孫(すなわちダビデの子孫)に継がせると約束されました。神の裁きは猶予されたのです。
確かにこの後、国は分裂します。北王国は王も民も神に背くのですが、南王国には主に信頼する「残りの者」と言われる人々がいました。イザヤ書から始まる預言書の中には、そのことが明確に記されています。神のあわれみはそれほど大きいのです。現在の私たちに対しても、神は同じようにあわれみを注いでくださいます。
三、レハブアム王の悪政
次の12章には、ソロモン王の死後に即位した息子レハブアムのことを詳しく述べています。神殿建築や富国強兵政策を行った結果として、国の経済力は弱っていました。民が重税に苦しんでいることを知りながらも、レハブアム王は父王よりももっと重い税金を民に課すことにしたのです。彼は、いったん経験した豪華な生活のレベルを下げることはできませんでした。第一サムエル8章の預言は、この時に現実のものとなります。
サウル→ダビデ→ソロモンと3代続いた王政でしたが、残念ながら100年ほどのうちに危機に陥ってしまいました。王に反抗するヤロブアムによって王国は分裂してしまったのです。王が神に信頼し、国民を愛して政治を行わない限り、同じような過ちは繰り返されます。現代の世界情勢を見るなら、この真理は3000年後も同じように当てはまることがわかるでしょう。
神の選民であるはずのイスラエルの歴史を見るなら、「神の国」を本来の姿に保つことの困難さを思わずにはおれません。常に主の前に謙遜になり、み言葉によって正しい道を求め続け、主と共に歩むことこそ、「御国を来たらせたまえ」という祈りが実現するために不可欠です。