2024.6.16メッセージ内容

「歴史を動かす神」 創世記37:1-11

おまえが私たちを治める王になるというのか。私たちを支配するというのか。」(8節)

創世記最後の14の章は、ヤコブの息子の一人であるヨセフが主人公となる物語を記しています。彼の波乱万丈の生涯は、神が歴史を動かしておられることを読者に知らせるのです。それはまた、アブラハムの子孫がイスラエルという民族になっていく備えであり、創世記に続く出エジプト記の背景を描くことにもなります。

一、思いがけない人物によって

イサクの長男ではなく、次男のヤコブが神との契約を受け継ぐ人物になったのは、人の考えを超越した神の選びによるものでした。それと同じように、ヤコブの11番目の息子だったヨセフが、「ヤコブの歴史」の中心人物となることは、ヤコブ自身も思いつかなかったことでしょう。しかも、そのヨセフは、父ヤコブと同じように、兄たちと仲良くできない性格だったのです。

世界の歴史には偉大な人物が次々に登場し、世界を動かしているように見えます。しかしその背後には神の選びがあることを、聖書は明確に宣言します。たとえ夢の話であったとしても、自分が他の兄弟や両親よりも偉大な人物であることを平気で語るヨセフは、思慮深くありませんでした。もちろん、それが神のご計画であることを悟っていなかったことは明白です。

二、思いがけない方法によって

ヨセフが兄弟や両親に話した夢は、自分が王となり皆が自分を伏し拝むという奇想天外な物語でした。当然兄たちは怒ります。父が年寄り子であるヨセフを偏愛していたこともあって、兄たちのねたみはどんどん増していきました。その結果として兄たちは家を遠く離れた場所でヨセフを捕らえ、奴隷商人に売り渡したので、彼はエジプトに連れて行かれたのです。

しかし、このようなドロドロとした愛憎物語の背後に主のご計画がありました。罪深い人間が自分の感情や欲望によって行動することは神のみ旨にかなうことではありません。しかし、そのような悪だくみさえも神は用いてくださるのです。来週学ぶ45章に至るまでの展開は、初めてこの個所を読む人には思いがけないことの連続で、まさに小説を読んでいるようです。

三、思いがけない結果となる

エジプトでの苦難の生活を通して、ヨセフは神が自分と共に歩んでおられることを確信します。それによって彼の人格も変えられていきました。さらに、夢の意味を正しく説明するという特別な神の賜物によってエジプトのナンバー2の高位に着くことになります。最後には、彼が最初に見た夢が実現して、兄たちが彼を伏し拝むという状況が実現するのです。

これら全ての出来事は、神のご計画の中にありました。飢饉の時でもヤコブの一家は生き長らえ、エジプトに移住することになります。そして地味豊かなナイル川河口の地域にどんどん増え広がり、その後400年間にイスラエル民族が形成されるのです。しかし、これはまだ神の大きな物語の始まりでしかありません。出エジプト記には、その後の神の贖いの歴史が広がります。

ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領は、「過去に目を閉ざす者は、結局のところ、現在にも盲目となる」と言ったことで有名ですが、その後に、「神への信仰とは、歴史における神のみわざへの信仰である」と言葉を続けています。神は、聖書の時代だけではなく、現在の世界の歴史をも動かしておられることを信じましょう。

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